御曹司社長はイケメンで甘すぎです。
翌日、美紀がニヤニヤとしながら近づいてきた。
「…叶先輩、社内で噂なんですけど、ロビーで先輩を待っていたイケメンって誰なのですか?」
もう昨日のことが、会社中で噂になっているようだ。
こういう話題は広がるのが早い。
「美紀ちゃん、…あのね…ええと…」
私が言いづらそうにしていると、横から誰かが口を挟んだ。
「…神代颯真、神代リゾートの社長ですよね。」
聞こえて来た声は、向井隼人(むかい はやと)私より2つ年下の後輩だ。
確か、美紀と同期入社だ。
向井君は、アイドルのような可愛い風貌の男性だ。
年上にも、年下にも人気がある。
私は驚きながら、向井君に尋ねた。
「向井君、なんで君がそれを知っているの?」
向井君は、何も答えることはせず、そのまま少し口角を上げると、どこかへ行ってしまった。
その様子を見ていた美紀は、少し口を尖らせた。
「なんだか、叶先輩ばかりモテますね…ずるいです…」
「そんなこと…絶対ないから!」
向井君と仕事以外に話したことなど無い。