オスの家政夫、拾いました。3. 料理のガキ編
「え、え…脅すんですか?」

「脅すも何も、向こうが約束守らなかったからでしょう!早くメール送って!電話もかけ直して!又印刷業者に頭下げたくなかったらさっさと動いて!」

「は、はあ…。」


佐藤くんが焦った顔で走って行く。全く、自分だって罪のない佐藤くんを責めたいわけじゃない。でもこれは仕事なのだ、原稿が一つ遅れる度、首を締め付けられるのは私なのだ…!彩響はまだ少し残っていたアイスコーヒを氷まで一気に口の中へ流し込み、ガリガリ噛んだ。3ヶ月前も似たようなことで印刷業者にどれだけヘコヘコしていたのか、思い出すだけで腹が立つ。数分が経ち、今度は又彩響の天敵とも言える人物が入ってきた。


「おい、峯野!」


大山編集長の声に彩響は又血圧が上がるのを感じた。今度はなに?又なにかあったの?編集長は手に持っていた何かを机の上に投げつけた。パンと響くその音に、オフィスの空気が一瞬で静かになる。彩響もビクッとしたが、あえて涼しい顔で返事をした。


「何でしょう、編集長。」

「この小冊子の最終校正、誰がした?」


編集長の言葉に、急いで小冊子の中身を確認する。付箋がついたページには、なぜか同じ文段が繰り返し二回載っていた。ここはデータを渡す業者へ渡す前に修正するよう担当の白谷くんに指示したはずなのに…。普段こんなミスはしない人なので、彩響はふとつぶやいた。


「白谷くん、どうして…」
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