Gentle rain
「美雨ちゃん…君を本気で抱いてもいい?」

俺の首元に手を回して、コクンと頷く彼女。


そして俺は、彼女の身体に、激しく情熱を打ち付けた。

今まで、女性経験が少なかったわけじゃない。

恋愛経験だって、人並にはあった。


それでも、彼女を自分の身体で、女性としての悦びを味あわせてあげたい。

彼女の身体も心も、自分のモノにしたい。

そんな歳甲斐もない純粋な気持ちが、何度も果てそうになる自分を抑えていた。


そう言えば、昔世話になった女性の上司が言ってたっけ。

『男は歳を取ると、自分の快楽よりも、相手を満足させたい気持ちの方が勝るのよ。』と。

だとしたら、俺は30半ばになって、彼女と出会えたことに、心から感謝したかった。

それでも、彼女の口から出た『もう、だめぇ……』という言葉には勝てなかった。

お互いの感情が、最高潮に達すると、荒い息使いと共に、俺は彼女の身体から離れた。
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