Gentle rain
すると今度は、彼女の方から、俺の体に寄り添ってきた。

まだ続く荒い息使い。

汗ばんだ彼女の素肌は、俺の身体半分まで、潤しているかのようだった。


「階堂さん……」

「ん?」

「私、今日は階堂さんに抱かれて、嬉しかった。」


何だろう。

心の中が何かで満ちていくのが、わかった。


「私、一生忘れません。今日の夜のこと。」

思わず彼女の肩を抱きよせた。

愛おしい。

そんな感情が、何度も何度も彼女の身体を、息もできないくらいに抱き締めさせた。


俺が彼女との時間で、心が満たされている間。

肝心の彼女の方は、どうだったのだろう。

少なくてもこの夜が、彼女に何かを決心させたのだろうと思う。

それは決して、俺の思うような幸せな結末ではなかった。




この夜を境に、彼女と連絡が取れなくなってしまったんだ。
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