Gentle rain
かろうじて、俺は首を縦に2,3回振った。

それを見て、ふらっと立ち去ろうとした彼。

「三科君。」

俺が呼びかけると、彼は一旦は立ち止った。

「……忠告、ありがとう。」


まだ疑ってはいるが、少なくても彼は自分のお兄さんの事を引き合いに出してまで、菜摘さんの事を教えてくれようとした。

それだけは感謝しなければ。

「いえ……また機会があれば。」

「ああ。」

彼はそこから一度もこちらを振り返ることなく、自分の会社へと戻って行った。


俺は会社に戻ると、すぐに秘書の子を呼んだ。

「お帰りはもう少し遅くなると、思っていました。」

「気が変わったんだ。」

近くのメモ紙を取り出し、今日登録したばかりの三科紘文という名前を書いた。

「この男を、調べてくれないか?」
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