Gentle rain
この業界では誰が結婚した、別れたというのは、芸能人並みに知れ渡る。

「一人に決めかねているのかね?」

「止めてくださいよ。そんなにモテませんから。」

昔から森川社長の冗談は、冗談に聞こえなくて面白い。

「勿体ないな。君ほどの男が。」

「いやいや。」

森川社長のリップサービスは、時々尊敬するものがある。

「女っていう生き物は、自分が寂しい時に傍にいてくれる男じゃないと、途端に離れていきますからね。」

「なんだ。仕事をしている間に、他の男へ行ってしまったか?」

森川社長は、脇にあった椅子を僕に足もとに置いた。


『有難うございます。』と言って席に座ると、隣の席に座った森川社長から、グラスを渡された。

受け取ると、森川社長はテーブルの上のウィスキーを手に取る。

蓋を開けて、“ほら、飲め”と言わんばかりに、差し出してくる。

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