Gentle rain
「ぼ、僕がですか!?」

大きなリアクションを見せる程、田辺君は菜摘さんに憧れているらしい。

「話しかけなければ、何も始まらないじゃないですか。男なら、待ってちゃダメですよ。攻めなければ。」

田辺君は、俺の言葉に大きく頷いた。

「そうですよね。どうせダメ元だ!階堂社長、俺、行ってきます!」

「ええ。頑張ってください。」

勇気を奮い立たせたのか、田辺君は勇んで、菜摘さんの元へと近づいて行った。

今、気づいたが菜摘さんとは、結婚の約束をしているのだった。

わざわざ、他の男を仕向けるだなんて、俺も人がいい。


そんな事を、人知れず考えていた時だ。

「行かないんですか?ご令嬢の元へ。」

スッと出されたワインと共に、その男はいつの間にか、俺の横に立っていた。


「どうぞ。」

「……どうも。」

グラスを受け取ると、その男は自分のグラスにも、赤ワインを注いだ。
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