Gentle rain
「菜摘さん、ふとした時に、階堂社長を見つめていらっしゃいましたよ。」

「菜摘さんが?」


まずい。

これでは、勇気を出した彼に失礼だ。


「気のせいではないでしょうか。」

「お気づかいは、無用ですよ。そのプレゼント、」

田辺君は俺の背中の影に隠れている物を、指差した。

「菜摘さんへの贈り物なんでしょう?」

「ああ、まあ……手ぶらで来るのも、なんですからね。」

何とか誤魔化せないかと、必死だった。

「ハハハっ!僕なんか堂々と手ぶらです。と言うよりも、ほとんどの人が手ぶらじゃないですかね。」


どういうことだ?

森川社長のご令嬢の誕生日に、誰もプレゼントの一つも持って来ていない?

「森川社長からの連絡で、『プレゼントは持ってくるな』とあったんです。」

しまったと思った。

俺にはそんな連絡等、一切入っていなかった。

< 78 / 289 >

この作品をシェア

pagetop