Gentle rain
だがそれもそれで、俺には意外だった。

あの森川社長なのだから、娘を溺愛して、料理なんてさせないだろうに。


「痛っ!!」

そんな声がキッチンから聞こえてきた。

「大丈夫ですか?」

俺は椅子から立ち上がって、菜摘さんの元へ駆け寄った。

「大丈夫です。ちょっと指を切ってしまって……」

「指を?見せて下さい。」

そう言って手に取った菜摘さんの指は、細長くて息を飲む程奇麗だった。

「よかった。ざっくり切れていなくて。」

少し血は滲んでいたが、絆創膏を貼っておけば、すぐに治るだろうと思う。


「すみません。階堂さんに何か作って差し上げようと思ったのに。これじゃあ、普段料理をしてない事がバレてしまうわ。」

「はははっ!その心配は御無用ですよ。菜摘さんの後姿を見て、いつもは手際よく料理しているのだろうって、思っていましたから。」
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