Gentle rain
菜摘さんに、笑顔が戻る。

「それよりも菜摘さんの奇麗な手が、無事でよかった。」

ふいに顔を上げた菜摘さんの頬が、ほんのり赤くなっている。

「綺麗だなんて……」


菜摘さんが自分の胸元へ、手を引いた時だ。

すかさず、その手を柔らかく右手で握った。

「お世辞なんかじゃない。本当に綺麗だと思っているよ。」

その勢いで、菜摘さんの体を俺の両腕の中に、引き寄せた。

菜摘さんの華奢な肩が、すっぽりと入る。

「あなたをこの腕で抱きしめる事ができるなんて、俺は贅沢者だ。」

「そんなこと……」

菜摘さんの心臓が高鳴りが、俺にも伝わってくる。

「あなたを取り囲んでいた、男達の一人が言ってた。菜摘さんは高嶺の花だって。」

俺の胸の中で、激しく首を横に振る菜摘さん。

「私は、高嶺の花なんかじゃないわ。いつも私をここから連れ出してくれる人を、探しているんですもの。その証拠に……」
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