Gentle rain
そんな質問は、なぜか可愛く聞こえる。

「まあ、そこそこいい値段もするけど……」

「えっ?」

彼女の顔が途端に、曇り始める。


「接待でよく使うんだよ。会社から遠くないし、かと言って近くもないし。上がホテルだから、相手を送らなくてもいいし。」

そう言うと彼女は、知らない事を教えてもらったと言わんばかりに、軽く頷く。

若い女性のそんな表情を見ると、もっといろんな事を教えてあげたくなるのは、歳をとった証拠なのだろうか。


「お店はあの奥。」

俺は彼女の背中に、軽く手を当てた。

ウェイターに案内された席は、店の中央に程近い場所にあった。

俺なんかは、もっと端にある席がいいと思ってしまうのに、そんな事をお構いなしだと、余裕で坐る彼女は、こんな状況に慣れているのか、それともただ単に若くて何もわからないだけなのか。
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