Gentle rain
彼女に触れていた手を引いて、ポケットの中に入れる。

「ここに来るまで、迷わなかった?」

「迷ったけれど、受付の近くにあった案内を見て、ここまで来ました。」

彼女が来てくれた嬉しさと、はにかんだ笑顔が尚一層、俺の心の不安を解かしてくれた。

「行こうか。」

「はい。」

女性との食事なんて、腐るほど経験してきたと言うのに、彼女との食事と思うだけで、心地よい緊張が身体の中を駆け巡った。


そんな事は言っても、彼女を連れて行くお店は、正直困った。

彼女は若くても、お世話になった夏目社長のお嬢さんだ。

下手な場所には連れて行けない。

迷った挙句連れてきたのは、よく知っている場所だった。


「素敵……」

彼女は思った以上に、感激しているみたいだった。

「ここ、ホテルの1階にあるレストランですよね。高くないんですか?」
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