Gentle rain
料理が出てきてからも、彼女から目が離せなかった。

彼女のテーブルマナーは、完璧だった。


「前に父が食べさせてくれた物があったので、それで選んだのに。私が選んだ物、間違っていませんでした?」

「否。逆に大正解だったよ。」

小さくホッとした仕草を見せて、彼女はクシャっと笑った。

どの仕草を見ても、綺麗だと言わざるを得なかった。


「美味しい?」

「はい、美味しいです。」

「お父さんと食べた料理、思い出した?」

彼女は少し照れた様子を見せた。

「なんとなく。思い出しました。」

「それは…よかった。」

夏目の話では、高校生になる頃に両親を亡くしたという彼女。

その当時は、この料理が何なのかだなんて、知らずに食べただろうが、それは紛れもなく父親との思い出の一つになっているんだ。
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