同居人は無口でクールな彼



「あのね、俺転校してきたでしょ?」


灰谷くんは静かに話し始めた。

そう言えば、灰谷くんは入院している妹さんが、こっちの病院に転院しないといけ
なくなって、家族で引っ越してきたんだっけ。


「俺、前の学校では学年のほとんどの人と友達だったんだ」


それは簡単に想像できる。

灰谷くんはだれとでもすぐに仲良くなれてしまうから。


「まあ、本当は“友達だと思ってた”が正しいかもしれないけどね」

「え……?」


灰谷くんの横顔は少しさみしそうだった。


「どういうこと?」

「前の学校では結構な数の人とライン交換してたんだ。友達だったから。でも――」


灰谷くんはこう続けた。

転校してもその友情はずっと続くものだと思っていたこと。

転校して間もなくは、やり取りが続いていたこと。


そして――

今ではだれともやり取りをしていないこと。


「それで気づいたんだ。前の学校には俺の本当の友達はいなかったんだって」

「本当の友達……」




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