同居人は無口でクールな彼
でも、悲しいものは悲しい。
今までのことを思い出すと、離れるのがさみしくて仕方がない。
「さみしいね、鈴香ちゃん」
「うん……」
泣くつもりなんてなかったけど……
灰谷くんの優しい声を聞いたら、一気に涙があふれてきた。
ちょうどその時だった。
美術室の扉が開いて、だれかが入ってきたのは――
「篠原くん!?」
ギョッとした表情に変わった灰谷くんは、わたしから一歩離れた。
無意識だったのか、その反応は素早くて……
わたしの方が驚いてしまう。
「なに泣かせてんの?」
わたしの顔を見たと思ったら、すぐに振り返って灰谷くんを睨む翔哉くん。
翔哉くん、もしかして……
灰谷くんがわたしを泣かせたと勘違いしてる……?