同居人は無口でクールな彼
「ねえ、野々村さん。今日の日直代わってくれない?もうすぐ部活の大会があって」
「うん……いいよ」
「ありがとう!野々村さん!助かる!」
これで何度目だろう。
クラスメイトの代わりに日直を引き受けるのは。
2年生に上がってまだ1ヶ月しかたっていないというのに。
「今日野々村だったっけ?日直は」
「いえ……長谷川さんは部活で忙しそうだったので」
「優しいな、野々村は。ありがとう」
職員室まで日誌を持っていくと、先生は毎回ほめてくれる。
でも、わたしは決してやさしい人間なんかじゃない。
ただ、人からの頼みを断れないだけ。
わたしだって放課後暇なわけじゃない。
入学当初から美術部に入っていて、放課後は毎日部活動があるのだから。
それなのに、毎回クラスメイトたちはわたしに日直を代わるように頼んでくる。
きっとわたしが断らない――断れないのを知っているから。