同居人は無口でクールな彼



「あ、ちょ……っ、わたし、彼女じゃな……」


慌てて否定しようとしたのに、わたしに気づいた翔哉くんがあっという間に目の前に来ていた。


「すず、帰るか」


翔哉くんは後輩の“彼女”という発言を否定しなかった。


「篠原先輩、彼女いたんすねー。意外っす」

「彼女じゃねーよ」


翔哉くんは今度ははっきり否定した。


でも――

そのあと、「まだな」と笑った。



「え……?」


その言葉にわたしも後輩くんも固まった。

“まだ”ってどういうこと……?


「すず、着替えてくるから、ちょっとカバン持って、あそこで待ってて」


そう言って、翔哉くんにスクールバッグを手渡される。

中身はほとんど入っていないのか、信じられないほど軽い。




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