同居人は無口でクールな彼



この日の放課後は、久しぶりに開始時間に美術室に行くことができた。

結局、翔哉くんに助けてもらったお礼は言えないまま、気づけば部活の時間に。


わたしが珍しく、時間通りに来ていることには誰一人触れない。

空気のような扱いが部活でも続いている。


もちろん、絵を描くのは好き。

好きだけれど、ときどき息が詰まりそうになる。


絵は人の心を表す、とよく言うけれど、まさにその通りだと思う。

だって、わたしは自分の絵に鮮やかな色を使えないから。


完成する絵は、さみしくてつめたい雰囲気のものばかり。

でも、今日は少しだけ明るい色を混ぜてみようという気分になった。



「野々村さん、珍しいわね。あなたが、こんなに温かい黄色を使うなんて」


美術部の先生だけが、わたしの変化に気づいてくれた。

でも、先生はわたしの味方じゃない。


きっと話は聞いてくれると思う。

でも、わたしだけの味方にはなってくれない。


わたしは、いつでも味方をしてくれる友達がほしいのかもしれない。





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