旦那様は征服者~慎神編~
「そんな……」
「新汰、どう?」
「いいよ。無能でも。まぁ、可愛い顔してるし!」
新汰が店員の顔を見て、微笑んだ。

奏瑪とオーナーが、慎神を見る。
「莉杏の気持ち、無駄にしたくないから。
お前、新汰のとこで働け」

「え……」
「何?嫌なの?」
「い、いえ…」

「奏瑪」
「はい」
「後は、頼むね!」
「はい、かしこまりました」

「奏瑪、オーナー、来て」
奏瑪とオーナーが、慎神の足元に跪く。
ポンポンと頭を撫でた。

「次はないよ。もう…裏切らないで?」
頭を撫でる手から、凄まじい重みを感じる奏瑪とオーナーだった。

その頃の、莉杏━━━━━
目が覚め、辺りを見渡す。
「慎神…くん…?」
トイレかと思い、しばらく待ってみる。
なかなか帰ってこなくて、莉杏はベッドの下に無造作に落ちているガウンを着てベッドルームを出た。

何処にもいない。
「え?なん…で…?」
途端に不安になる、莉杏。

慎神に出逢ってから、ある意味鬱陶しいほどに一緒にいる慎神と莉杏。
日中は屋敷に一人だが、こんな夜中に一人でいるなんてなかった。

広い屋敷に一人なんて、不安で堪らないのだ。

慎神に電話をかける、莉杏。
「……お願い!出て!」
『もしもし?莉杏?』
「あ!慎神くん!今何処!?」
『ちょっと、出てるんだ』
「いつ帰ってくる!?」
『もう帰るよ!』
「そう。良かった…じゃあ、待ってるね」
『ごめんね!一人にして』

「早く…帰ってきてね……」
莉杏は小さく呟いた。

電話を切った慎神。
途端に笑い出す。
「王子?どうしたの?」
「莉杏が、俺にどんどんはまってくから。嬉しくて…!
このまま、本当の意味で俺なしで生きれなくなってほしいなぁ~」

「王子はさ!」
「んー?」
「姫君を最終的に、どうしたいの?」

「そんなの……決まってる!」
「ん?」
「莉杏の身の回りの全てをしたい。
言葉通り、俺がいないと生きていけなくなってほしい。だって俺自身が……莉杏がいないと生きていけないから」
「姫君はいいなぁー
俺のことも、もっと必要としてー!」
新汰は、慎神を微笑ましく見ていた。

その話を聞いている、奏瑪とオーナーと店員。
三人は慎神と新汰を見て異常さを感じ、その恐ろしさで身体を震わせていた。

「じゃあ、帰る!莉杏のとこに早く帰ってあげなきゃ!」
「王子、その王子の“命”に会わせてよぉ!」
「やだ」
「えー!会いたいぃー」
「やだ。
奏瑪、車回して」

「はい、かしこまりました」

慎神は、個室を出ていったのだった。
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