旦那様は征服者~慎神編~
『莉杏?どうしたの?』
「あっ!慎神くん!?車!」
あまり来客がない上に、見知らぬ車の存在でパニックになっている、莉杏。

『莉杏!?落ち着いて!?ゆっくりでいいから、話して!?深呼吸して、ゆっくり…』
慎神は、落ち着かせるように言う。

「ふぅー
今、誰か来たみたいで、インターフォンが鳴ってるの。防犯カメラ見たら知らない車だし、なんだか怖くて……」
『わかった。すぐに帰るから、絶対に開けちゃダメだよ!大丈夫!すぐだから!』
莉杏は通話を切り、ソファに座って耳を塞いだ。

しばらくインターフォンが鳴り続き、しばらくして鳴り止んだ。

「え?や、止んだ?」
すると、今度はリビングの窓がドンドンと叩かれ始めた。
「ひゃぁっ!!?だ、誰!!?」

「ここ、開けてー!!
僕、怪しいもんじゃないからー!」
男が、ソファに座っている莉杏に声をかけている。

(いや、十分怪しいし!!どうしよう……あ!警察を呼ぼう!不法侵入だよね!これ!)
しかし、手が震えて思うように操作できない。

「僕、京極 新汰って言って、慎神の親友なのー」
「え?新汰…?」
その名前に、手がピタッと止まった。

「開けてー
えーと…莉杏ちゃん!だよね!お願い!開けてー
王子に言ってもなかなか会わせてくんないから、会いに来たんだからさ!」

莉杏は黙って、頭を振る。

「いいじゃーん!」
「ちょっ…アニキ!ダメっすよ!!
慎神さんに、殺されますよ!」
豹磨が来て、新汰を必死に止める。

「いいでしょ?姫君に会わせてくんない王子が悪いんだもん!」

そこに、門を車が通過した音が鳴る。
「慎神くん!?」
莉杏は玄関に駆け出した。

ドアを開けると、ちょうど車が止まり後部座席から慎神が出てきた。
「慎神くん!!!」
莉杏は慎神に抱きついた。

「莉杏!?大丈夫!!?」
「お庭に、新汰さんが!!」
「は?新汰?」

「王子ー!」
「新汰!!?なんで!?」
「王子が会わせてくんないからさー、自分で会いに来たのー」

「…………勝手に…会ったの?」

「王子」
「莉杏に…勝手に……」
明らかに慎神の雰囲気が黒くなっていく。

「慎神…くん?」
「莉杏、屋敷の中に入っててくれる?」
「え?」
「大丈夫。すぐに、ギュって抱き締めるよ!」
莉杏の頬を包み込んで、微笑んだ慎神。
「でも…」
「莉杏…ほら、僕の目を見て?
大丈夫だから…ね!すぐに、行くから!」
「わかった」

ゆっくり屋敷に入った、莉杏だった。
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