旦那様は征服者~慎神編~
それからほぼ毎日、洗濯物を干している時に必ず挨拶をするようになる。

莉杏は、少しずつ心を開くようになっていた。

男性の名前は、成見。
無愛想な莉杏に、いつも同じ態度で挨拶してくれていた。
仕事は在宅で、独身。
一人で気楽に、過ごしていると話していた。

「天摩さんは、お仕事は?」
「専業主婦です」
「へぇー、旦那さんはどんな方なんですか?」
「とても優しくて、カッコいいです!」
「へぇー、好きなんですね~旦那さんこと!」
「えぇ…」
「今度、会ってみたいなぁ~」
「それは…」
「………なんてね…」
「あの、ここでお話してることは……」
「わかってるよ!内緒なんでしょ?
そんなに、怖いの?旦那さん」
「あ、いや…」
「でも、優しい人なんだよね?」
「はい」
「なのに、毎日俺と話していることは知られたくない。
……………それってどうゆう意味?」
「………」
俯く、莉杏。

「旦那さん、嫉妬深いとか?」
「まぁ…」
「そっか。大丈夫だよ!俺達、ただのご近所付き合いだし、やましいこと何もないでしょ?
もし旦那さんに何か言われたら、俺のせいにして構わないから!
大丈夫…大丈夫だよ!」
成見の柔らかな笑顔。
何故か、その笑顔に妙な安心感を感じた莉杏。

自然と微笑んでいた。
「フフ…笑ってくれた!嬉しいなぁ~!」
莉杏の笑顔に、成見も微笑んでいた。

そして、莉杏に少しずついつもの笑顔が戻っていった。

成見のお陰で、慎神の征服をまた受け入れられるようになっていた。

「最近、また莉杏の笑顔が戻ってきたみたい!
嬉しいな!」
「うん…」

「何の心境の変化なのかな~?」

莉杏を何度も抱いて、ベッドのヘッドボードに寄りかかって座っている慎神。
煙草を吸いながら、横になっている莉杏の頭を撫でていた。

「え?」
「莉杏はいい子だから、僕の安心を奪うようなことしてないよね?」
「……うん」

「……………莉杏、おいで?」
煙草を灰皿に潰した慎神が、莉杏に向かって手を広げる。
「うん……」
ゆっくり、慎神の膝の上に跨がり抱きついた。

「莉杏、好きだよ」
「私も…」
「私も?」
「え?」
「私も何?ちゃんと、言って?」
「好きだよ」
「うん、嬉しい!
僕から、放れないでね……!」
「うん、私には慎神くんしかいないから……」

「そうだね。莉杏は、僕から放れられない。
僕に逆らえる人間は、この世にいないんだから!」
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