旦那様は征服者~慎神編~
次の日から、一ヶ月間。
莉杏は、慎神の凄まじい“愛情”を教え込まれた。

毎日のメールは必須。
電話も必ず毎日で、仕事・就寝中・風呂やトイレ等以外…例え食事中でも常に通話状態なのだ。

そして慎神以外の人間と会う時は、相手の写真付きでしかも事前に報告必須。

朝必ず、慎神が迎えに来て会社まで送ってくれ、帰りも迎えに来て家まで送ってくれるのだ。

最初の数日は、さすがの莉杏も退いていた。

メッセージが、こと細かく送られてくるからだ。
『莉杏、おはよ』
「天摩さん、おはようございます」
『慎神って、呼んで?』
「じゃあ…慎神くんで!」
『今何してるの?』
「朝ごはん食べてます」
『何を食べてるの?』
「食パンと、野菜スープです。朝はあんまり食べれなくて……慎神くんは、朝ごはんは何ですか?」
『僕は、焼き鮭と肉じゃがと、小松菜のおひたし、味噌汁だよ。ありきたりだけど、こうゆうのが一番好き!』
「凄いですね!朝から、ちゃんと作ってしっかり食べてて!なんか、お恥ずかしい……」
『どうして?』
「だって、私は朝からそんな凝ったもの作れないし……慎神くんは、社長さんでお忙しい人なのに凄いです!」
『なんか、勘違いしてない?』
「え?」
『朝食、僕が作ってるんじゃないよ』
「そうなんですか?家政婦さんとかですか?」
『うーん。そうだなぁ。まぁ、そんなとこかな?
僕は料理だけは、できないの。
味つけとかの塩梅が、理解不能だから』
「そうなんですね。
今度、お弁当作りましょうか?
…って言っても、立派な物はできないですが…」

すると、電話がかかってきた。

画面に“天摩 慎神”の文字。
「え?で、電話!?
…………はい、慎神くん?」
『ありがとう!』
「え?」
『お弁当!嬉しい!あまりにも嬉しくて、電話したの!それに声聞きたくて!!』
「うん。あ、でも…期待はしないでくださいね」
『フフ…あーどうしよう…どんどん好きになるー』
「え?でもまだ、今日で三日目…」
『だって、朝からこんなに僕に付き合ってくれるの、莉杏が初めてだから』
「そうですか?
あーーー!!」
『ど、どうした!?』
「用意しなきゃ!!慎神くん、ごめんなさい!私まだ、パジャマ姿で…」
『フフ…可愛い~わかった!一回切るね!
じゃあ…30分後に!』

「す、凄い…これ、毎日なのかなぁ……」

こんな感じで、朝だけでこんなやり取りを毎日するのだ。

そして、一週間程経った頃。
莉杏は朝から会社に持っていく書類を作成していた。
『莉杏、おはよ』
『おーい!起きてるー?』
『早く起きないと、遅刻するよー』
『莉杏ー』
『起きてー』

ここで着信が入る。

『莉杏?』
『体調悪いとか?』
『莉杏、心配だから連絡ちょうだい!』
『もしかして、倒れてる?』
『お願い!一言でも構わないから!』

再度、着信。
不在着信が、10、20…60……と増えていく。
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