旦那様は征服者~慎神編~
それからも、少しずつ…少しずつ“天摩 慎神”が莉杏に侵食していく。
毎日の細かいメール。
毎日の長電話。
まるで常に一緒にいるようだ。

そして休みの日は、慎神のマンションで一日中二人っきりで過ごす。
金曜日に慎神のマンションへ行き、月曜日の朝会社に行くまで二人っきりで過ごす。

その間、惜しみない愛を慎神は莉杏に与えたのだ。

しかし━━━━凄まじい束縛と、管理。

確かに、誰もが逃げたくなる愛情表現だ。

「莉杏、もっと僕を好きになって?
僕しか見えなくなって?」
そう言いながら、ベッドに莉杏を縫いつける。

しかし莉杏は、逃げようとは思えなかった。
友人も少なく、恋人もいたことはあるが、社会人になってからいなかった莉杏。

寂しい生活を送っていて、こんなに慈しまれたことがない。

確かに怒った慎神は恐ろしいが、莉杏が言いつけを守れば本当にもったいないくらいの、紳士だ。

「莉杏は偉いね」
「え?」
あれから三週間程経った頃。
抱かれた後にヘッドボードに寄りかかって座っている慎神に後ろから抱き締められている、莉杏。

唐突に言いだした。

「みんな僕の愛から逃げていったのに、莉杏はそれでも傍にいてくれるから。
早い子は、三日もたなかったなぁ…長い子でも、一週間」
「なんか…慎神くんを見てると、私に似てるなって思うから」
「ん?似てる?そうかなぁ?僕は、莉杏みたいに純粋じゃないよ」

「慎神くんも、寂しいのかなって…」

「え━━━!!?」

莉杏に出逢って、驚かされてばかりだ。
ただでさえ、三週間も逃げずに傍にいてくれて驚愕しているのに、僕の事を“寂しい”と言う。
僕自身を見てくれてる気がした。

慎神って、カッコ良くて、頭が良くて、優しくて………完璧!!
と、うわべだけの言葉ばかり言われ続けてきた。

しかし付き合って好きだからこその束縛、管理、執着を見せると、今度は“キモい”と言って逃げる。
そんな女ばかりだった。

自分の内面を見てくれる人を探し続けていた。

婚活パーティーに出席していたのは、結婚を考えている女性ならちゃんと中身を見てくれると思ったからだ。

「莉杏、大好き!ずっと、傍にいて?
莉杏のこと、大切に、大切に愛すから!
………一生、莉杏だけを…」
慎神は更に莉杏を後ろから抱き締めた。


そして一ヶ月後━━━━━━
「莉杏、改めて言わせて!
僕は莉杏を愛してるよ!ずっと傍にいて?
僕が、莉杏だけに最高の愛情をあげるよ」
「うん。最高の愛情かぁ。
どんなの?」

「洗脳し、征服して、管理する。
最高の、愛情表現だよ!」
と言って、慎神は笑った。

「そして最終的に、僕達はお互いに依存していくんだよ……?」

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