秘密のノエルージュ

 冗談。なら、尚更言って欲しくなかった。もちろん本気で言われても嫌なのだけれど。

 胸が大きいのは、菜帆のコンプレックスだ。自分ではそれを上手く隠してきたと思っていた。けれど菜帆自身が嫌だと感じているところは、相手にも簡単に見抜かれてしまうのだろう。きっと無意識のうちに。

 先輩に対する憧れの気持ちが、急速に崩れ落ちていく。上手く表現できない嫌悪感が、胸の奥でひしめき合う。

 悲しみや苛立ちや泣きそうな気持ちを一気に感じながら『あはは』なんて無理に笑ってみた。乾いた笑いで不快の感情を誤魔化して、自分の手元に視線を落とす。

 画面が真っ暗になったスマートフォンのロックを解除すれば、きっとまたお気に入りのランジェリーのサイトが表示される。そうすれば下降してしまった菜帆のテンションはすぐに復活する。

 でも。
 いや、だからこそ。

 今、この場でスマートフォンを操作して自分の好きなものを見たいとは思えなかった。隣からにこにこと笑いかけてくる先輩に、これ以上コンプレックスを暴かれたくなかった。

 それよりも。菜帆が大好きなランジェリーの世界を、きらきらと眩しい、可愛らしくて美しい世界を。いやらしいと一方的に決めつけてくる先輩の目に晒したくはなかった。大好きな世界と菜帆自身に、これ以上踏み込んできて欲しくなかった。

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