秘密のノエルージュ

 自意識過剰な考えも、大和には素直に口にできた。けれど改めて考えてみたら、自分の身体に自信がある勘違いも甚だしい発言な気がしてきた。だから笑って茶化そうとしたのに、大和はやっぱり真剣に答えてくれる。

「え……、あ、うん……ありがとう」

 その真剣さに触発されるように顎を引く。いたずら好きの大和だが、本当の彼は優しい人だ。

 しっかりと採寸して身体に合った下着は、菜帆のコンプレックスを埋めてくれる。欠点を補正してくれる。自分に自信を持たせてくれる。しかも可愛くて美しい。

 そんな存在を好きになる気持ちをわかってくれる異性は、大和だけだ。理解してくれて、心配してくれて、気を遣ってくれる人はきっと、彼だけなのだろう。

 ふと沈黙が降りる。小石を踏んだスニーカーとアスファルトが擦れて、じゃりっと乾いた音が夜道に響く。

「先輩は……受け入れてくれなかったな」

 冷たい夜風と一緒に溶けてしまえばいいのに、と思いを込めながらポツリと落胆を口にする。

 誰にもでも分け隔てなく優しくて、笑顔が素敵な先輩だった。同じ学部で、講義が被った時に一緒に課題をやったりした。話も面白くて、ノリも良くて、憧れていたはずだった。

 なのに今日、その先輩に対して嫌悪感を抱いてしまった。だから自分の想いは何だったのか、あまりにも薄い恋心だったのではないか、と自己嫌悪してしまう。一度そう思ってしまうと、今度は先輩ではなくて自分の考え方が嫌になってくる。

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