秘密のノエルージュ



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 十二月二十四日、クリスマス・イブ。例年と同じく、家族でいつもより豪華な夕食を食べて過ごした。

 あの後、菜帆は先輩に『付き合わない?』と告白された。今年のクリスマスを一緒に過ごしたい、と言われた。けれどあんなに好きだったはずの先輩からの告白はちっとも嬉しくなかった。

 好きな子に下着を贈りたいなんてバカみたいなことを真顔で言う大和よりも、軽さを装って菜帆を誘ってきた先輩の視線の方が、よっぽど下心で満ち溢れていた。

 一緒に過ごすクリスマス――真っ先に顔が思い浮かんだのは大和の笑顔だった。それから家族と食べるご馳走が思い浮かんで。えっちだね、と言われた時の嫌悪感を思い出して、身震いして。最後にもう一回大和の顔を思い出した時には『ごめんなさい』と言っていた。

 でもこれでよかったのだと思う。大和の言うように、先輩と菜帆は最初から相性が良くなかった。先輩は菜帆が夢中になれる唯一の趣味を認めてはくれず、いやらしいと決めつけられてしまった。だからきっと、この先先輩と一緒にいても苦しいだけなのだ。

 それどころか、冬のイベント終了と同時にフラれてしまうかもしれない。確証はないが『いやらしい子好きだよ』と言った先輩の言葉から、用が済めば手のひらを返したように捨てられる可能性は感じ取れた。

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