偽装夫婦のはずが、ホテル御曹司は溺愛の手を緩めない

「少しでも響一さんの役に立ちたいので、一生懸命頑張ります!」

 背筋を伸ばして気を引き締め、ぴしっと敬礼する真似をしたら、響一がフッと笑ってくれた。

 ネクタイを外そうとしていた手を止めると、その指先が頬に触れる。肌の上をするっと撫でられ、何も入っていない頬をむにっと摘まれる。

「あんまり根詰めるなよ。倒れたら元も子もないぞ」
「大丈夫です。新しいことを勉強できるのは楽しいので」
「そうか。……ま、仕事では甘やかさないが、そのぶん家ではめいっぱい甘やかしてやるから」

 その頬に触れる指がいつの間にか耳朶に移動し、大きな手があかりの顔を包み込むように撫でる。

「――ほら」
「響一、さん」

 誘いの言葉をかけられる。えっと声を上げる前に視界がくるりと反転する。

 気が付けばあかりの身体はソファに押し倒され、上からのしかかる響一の右手はあかりの顎の先に、左手はネクタイの結び目にかかっている。

 瞳の奥にぎらぎらと揺れる炎を見つけたあかりは『ご飯が冷めますよ』という文句は口にしないことにした。その代わり彼の背中に腕を回して、足先に引っかかっていたルームスリッパを床の上にポトリと落とす。

 あなたが今夜も甘やかしてくれるというのなら――

「私も、響一さんをいっぱい甘やかしますね」

 契約結婚から始まった二人は、今もまだ溺れるような蜜月にいる。


 ―― Fin*


< 108 / 108 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:246

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

幼なじみの過保護愛 -星のかけらは純愛のしるし-

総文字数/31,994

恋愛(純愛)47ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
会社勤めの池田咲は、高校時代、部活中に幼なじみの本庄光希が蹴ったボールが当たって目に怪我を負った。以来、責任を感じた光希から過保護に守られる日々を送っている。 傍にいてくれることが嬉しい。 ただの『幼なじみ』以上の関係になりたい。 ――でも自己犠牲はしてほしくない。 秘めた気持ちを伝えられず『幼なじみ』という微妙な距離感を保っていた二人だが、ある日同僚から『本庄くんに連絡先を渡してほしい』と頼まれ、さらに同期の男性社員から『池田と二人きりで過ごしたい』と誘われる。 恋心に揺れ動く咲の感情に気づいたとき、光希がとった行動は―― ◆ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団体には一切関係ございません ◆ 表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しています ◆ エブリスタにも投稿しています
御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

総文字数/212,637

恋愛(純愛)329ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
*Story* 秋月 美果が勤務する 『天ケ瀬百貨店東京』には、 本社の営業本部長・天ケ瀬 翔が ときどき視察に訪れる。 完璧な御曹司である翔を 遠い存在だと感じていた美果だったが、 別の勤務先に翔がやってきた際に、 偶然 彼の『裏の顔』を知ってしまう。 トラブルに巻き込まれたくないと 翔を避ける美果だったが、 とある事情から美果が お金を稼ぎたがっていることを知ると、 翔から突然『俺の専属家政婦になれ』と 雇用契約を持ちかけられて――? ―――――*――――― 百貨店経営グループ本社 営業本部長 御曹司 天ケ瀬 翔 31歳 Amagase Sho × 3つの仕事を掛け持ちする苦労人 秋月 美果 25歳 Akizuki Mika ―――――*――――― *開始 : 2024.10.23.* *完結 : 2024.11.20.* ◇ 設定はすべてフィクションです。実際の人物・企業・団体には一切関係ございません ◇ アルファポリス・ムーンライトノベルズ・エブリスタにも掲載しています
表紙を見る 表紙を閉じる
 ある日突然、父と血縁関係がないことが発覚した社長令嬢の絢子。母の不義を理由にわけも分からぬまま家を追い出された絢子だったが、行くあてもなく夜風にさらされていたところを婚約者の玲良に発見されて捕獲される。  しかし社長である父に勘当された以上、絢子と玲良の婚約は白紙になるだろう――そう思っていたのに、絢子はなぜか玲良の一族が経営する豪華なホテルのスイートルームに囲われ甘やかされることに。 「婚約は絶対に解消しない。――俺から逃げられると思うな」 父に絶縁された元・社長令嬢 桜城 絢子(22) *Ayako Sakuragi* × 獅子堂財閥グループ御曹司 獅子堂 玲良(28) *Akira Shishido* もともと政略結婚で、今となってはそれすら叶わなくなった。なのに初恋の彼の視線と指先には、甘美で熱い温度が込められていて――…… * 2023/11/20 連載開始 * * 2023/11/26 完結 * ꒰ঌ.*・伊桜らな さま・*.໒꒱ 素敵なレビューを ありがとうございます…♡ とっても嬉しいです…°˖✧

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop