夕立のあとには……
それから、毎朝、飛鳥は私を迎えに来て、同じ電車に乗り、私を守るようにそばにいてくれた。

けれど、それが再び女子の反感を買うことになる。

毎朝、飛鳥と並んで登校する姿は、嫌でも目立つ。

早速、クラスの女子から尋ねられた。

「ねぇ、日和ちゃんって、5組の飛鳥くんと付き合ってるの?」

彼女、前田さんは、大きな目が特徴的な美人さん。

気の強そうな彼女は、クラスのリーダー的存在。

「ううん。家が近所なだけ」

私はありのままに答える。

「ふーん。じゃあさ、飛鳥くんって、彼女いるの?」

この話の流れは……

中学生の頃の嫌な思い出がよみがえる。

「いないと思うよ」

結局、そのまま、根掘り葉掘り、飛鳥のことを聞かれ、当たり障りのない答えを返す。

中学生だったあの時、どうするのが正解だったのか、2年経った今も答えは見つからない。


そして、痴漢事件から3ヶ月が経った今、また同じことが起きている。

クラスの半数の女子から無視をされ、チクチクと嫌味を言われる毎日。

そして残りの半数は見て見ぬふり。

私は、中学の頃と同じように、学校では、休み時間もひたすら勉強をし続けることで、彼女たちをやり過ごす。

進学校でよかった。

毎日、やるべき課題や小テストは山のようにある。

2年生だし、のんびりしてる子も多い中で、私はひたすら勉強を続けた。



そして、今日の日直も、もう1人の野村さんは、前田さんの腰巾着のようにいじめに加担している子なので、当然、日直の仕事などすることなく帰ってしまった。

でも、まぁ、嫌味や悪口を言われながら、一緒に仕事をするより、1人で作業する方が気楽でいい。

そう思った私が筆箱をしまうと、後ろの入り口で物音がした。

振り返ると、そこには数名の女子。

1番後ろに前田さん。

野村さんが、重そうなバケツを手に歩いてくる。

掃除?
今から?

疑問に思った私が首をかしげると、野村さんは、バケツを胸の位置まで上げた。

何?

私がそう思った次の瞬間、私は頭の上から水を浴びた。

「あ、ごめーん! つまづいちゃった」

そんなわけない。
明らかにわざとだったじゃない。

でも、それを言ったところでとぼけるのは目に見えている。

私は黙って立ち上がり、ハンカチで頭から順に拭いていく。

「あ、日誌、書いてくれたのね! じゃあ、私、職員室に届けてくるから、あとお願い」

野村さんは、その場にバケツを置くと、私の陰になってほとんど濡れなかった学級日誌を手に、何事もなかったかのように他の女子たちと教室を出て行った。
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