夕立のあとには……
今まで、無視や陰口はあったけど、こんな風に物理的に攻撃を受けたのは、初めて。

なんで、私がこんな目にあうの?

ただ、飛鳥と幼馴染みで、朝、一緒に登校してるだけじゃない。

そんなことを思うけれど、思ってたところで、どうなるわけでもない。

私は、ハンカチを絞りながら、自分の体をさっと拭くと、掃除道具入れ横の雑巾を取りに向かった。

濡れた髪と制服のまま床を拭く。

パタン……

バケツと雑巾を片付け、掃除道具入れの戸を閉めると、どうしていいか分からなくなって、その場に立ち尽くした。

濡れたまま帰る?

いや、これじゃ、他のお客さんに迷惑だから、電車に乗れない。

保健室で着替えを借りる?

なんて説明する?
いじめられてますって言う?
そんなこと言えないし、言いたくない。

私は自分のロッカーを開けると体操着を取り出してトイレで着替えた。

濡れた制服をたたんで、ビニール袋に入れると、私は昇降口へと向かう。

髪はまだ濡れてるけど、仕方ない。

私が昇降口で靴を履き替え、校門へと向かっていると、後ろから声を掛けられた。

「日和!」

飛鳥。

振り返らなくても、声で分かる。

タッタッタッタッ

走ってくる足音が聞こえる。

こんな姿で振り返ったら、何を言われるか……

私は振り返ることもできず、ただその場に立ち尽くした。

「日和、そんな格好でどうしたんだよ? 髪も濡れてるし。何があった?」

私の肩に手を掛けた飛鳥は、私の顔を覗き込む。

全部、飛鳥のせい!

そう言えたら、どんなに楽だろう。

でも、悪いのは飛鳥じゃない。

それが分かってるから、私には何も言えなかった。

「ん、ちょっと」

私は、それだけ答えて、再び歩き始める。

けれど、肩をつかんだ飛鳥はその手を離そうとしない。

「日和、ちょっとじゃ、分かんないだろ。何があったんだよ」

その横を十数人の男子が、通り過ぎていく。

「飛鳥、行くぞ?」

そう声をかけるのは、飛鳥と同じサッカー部の男子。

「バカ、邪魔するなよ」

別の男子が、先に声をかけた男子の頭を小突く。

「飛鳥、先行ってるから、気にせず、ゆっくり来いよ」

2人目の男子がそう声をかけると、みんなわらわらと私たちを追い抜いて校門を出て行く。







< 5 / 9 >

この作品をシェア

pagetop