大安吉日。私、あなたのもとへ参りますっ!
***

 修太郎(しゅうたろう)に突然肩を掴まれた日織(ひおり)は、その手の力強さに思わず眉をしかめる。

「しゅ、たろぉさっ、痛いです」

 抗議の声を上げたら「あっ、すみません」とすぐに力を緩めてくれたけれど、離す気はないらしい。

「あ、あの……」

 たかだか呼び名ですよ?と続けようとして、ジロリと恨めしげに見つめ返された日織は思わず言葉に詰まって。

「こ、子供の頃からそう呼ばれていたので……えっと、ぎゃ、逆に違う呼び方で呼ばれることが……その、そ、想像つかないのですが……」

 言葉を選びながら恐る恐る言えば、「彼は日織さんが結婚されたことはご存知なんでしょう?」と畳み掛けられて。

「……はい」

 と答えたら「でしたらこれを機に〝塚田〟で呼んでもらえばいい」とどこかで聞いたことのある提案をされてしまった。

(あ、これ、十升(はすみくん)一斗(いっと)さんに言ってた言葉なのです)

 そう思い出した日織は、思わず「羽住(はすみ)くん、すごいのです! 修太郎さんのこと、よく分かっていらっしゃるのです!」と感嘆の声を漏らしてしまって。

 修太郎に「何故ここで彼?」とジロリと睨まれてしまう。
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