ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


「やはり、子どもはいたんだな」 

『はい。残務整理していたら、クレジットカードの控えが偶然見つかりました。幼児用のチャイルドシートの購入記録があったんです』

「それを買った店に行ってみたか?」
『いえ、まだこれからです。ご一緒されますか?』

さっそくふたりで出かけることにした。
三上が調べたら、店はデパートや量販店ではなくJRの駅から近い商店街にあるベビー用品やおもちゃの店だった。

航大が通った大学に近く、どちらかと言えば高齢化で寂れた商店街だ。
人通りがほとんどないから、目立つ容姿の航大が女性と歩いていても目立たなかっただろう。

駅で待ち合わせをしたふたりが店に行ってみると、初老の男女がのんびりと店番をしていた。
店主夫妻だろうと当たりをつけた友哉が声を掛けようとしたら、三上に止められた。
カイロで働く必要性から、口髭と顎髭を蓄えている友哉はチョッと見には恐ろしい。
せっかく話を聞きに来たのに怯えられては大変だ。

「すみません、チョッとお尋ねしたいのですが」

厳つい友哉に比べて如才ない三上が、柔らかい微笑みを浮かべて店主らしい男に歩み寄った。

「この品番のチャイルドシートを以前に買った男性を覚えておられましたら教えていただけませんか?」

男ふたりの客にやや警戒していた男性も、店の商品のことだとわかるとすぐに反応を見せた。

「ああ、これね。高級なヤツだから取り寄せたんだ」

その隣で妻らしい女性も頷いている。

「ご夫婦で、お子さんと一緒に買いに来られたわね」
「そうですか。その方のお名前を覚えておられませんか?」

店主夫妻は唐突な申し出に怪訝な顔をみせた。個人情報をあまり喋りたくないようだ。


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