ズルい男に愛されたら、契約結婚が始まりました


「藤本さん!」

山崎がデスクから走ってきて、ぐらりと揺れた瑠佳を抱きとめてくれた。

「すみません。急に立ちあがったからかクラっときて」

「貧血かな? 顔色が良くないですね」

再び目の前が暗くなってきた。

「あ……」

慌てた山崎ががっちりと抱きとめてくれたので、床に倒れ込まずに済んだ。

なにか言わなければと思うのだが、言葉も出ない。

「救急車を呼びましょう」
「いえ、すぐおさまりますから」

やっと声が出たが、その時、社長室のドアがノックと同時に開けられた。

「失礼」

友哉の声が聞こえた。



***



友哉は目を見張った。目の前で、瑠佳が山崎に抱きしめられている。

「白石さん! 驚いた! ロスじゃなかったんですか?」

山崎が声を上げるが、瑠佳をその腕から離さない。

「これは? どういうことだ?」

妻と山崎社長の抱擁シーンを見せられて、友哉は顔色を変えた。
そんな友哉を見て山崎は慌てたが、瑠佳はぐったりとしたまま社長の腕の中だ。

「ああっ、誤解です! 僕はなにもしていません!」

「ですが、その手は」

瑠佳の身体から、手を離さないのを見た友哉がずんずんと近付いてくる。

「奥さんが倒れたんです!」
「ええっ?」

山崎の腕から瑠佳を奪うように抱き取ると、友哉はその顔色を見て慌てた。

「瑠佳!」



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