一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
父はまた一つ咳をし、私を見据えた。
「海外から帰ってきたばかりだし、少しゆっくりとしていなさい。見合いをすればすぐに結婚となるだろうし」
「はい」
私は頷いて、それでは失礼します、と席を立った。
そのとき、父が思い出したように口を開く。
「そうだ。沙穂が帰ってくるって聞いて、遥が会いたがってたぞ」
それを聞いて私は目を輝かせる。
「今日、遥の家に泊ってもいいですかっ?」
「あぁ、夜更かししすぎるなよ。遥はうちのエースだ」
「遥さんはラボです」
増田が加える。
「はぁい」
私はぺこりと頭を下げて、社長室を出た。
遥は、藤 遥と言って私の父方の従姉だ。
親戚の中でもとびぬけて頭が良くて、スポーツも万能。高校ではテニスの全国ベスト8にもなった。私の自慢の姉のような存在なのだ。
私はスキップしながら研究所に向かうと、中にいた遥に手を振る。
遥は少しして私に気づくと、『もうすこしまってて』と口パクをして見せた。
私は微笑んで頷いた。