一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

「あの氷室鷹也⁉ あんたそれ、ヒムログループの御曹司だよ! 売上高世界第10位、日本最大手の製薬会社の御曹司!」
「まさか! え、あのヒムロ⁉」
「まさか、ってこっちのセリフ!」

 遥はそう言ってそれから顔をしかめて呟く。「それにしても、なんでアイツが……ただの氷室の名前を語った偽物って可能性もあるわよね?」

「『アイツ』ってことは……遥、知ってるの?」
「知ってるも何も、中・高と大学一緒でゼミまで一緒」

 遥は有名な中高一貫校を卒業し、日本最難関の大学の薬学部の卒業生でもある。
 遥と同じってことは、彼も遥と同じように優秀ということだ。

 私はその事実になんだか嬉しくなった。

「氷室が卒業後すぐに研究員として海外に行ったのは知ってたけど、ローマか。なんとなくアメリカだと思ってたわ」
「どうして?」
「なんとなくよ。あまり人を寄せ付けない雰囲気だったし。個人主義の国が似合いそうって思っただけ」

 遥は呟くと、私は首を傾げる。

(人を寄せ付けない? 個人主義?)

 少なくとも私がローマで出会った鷹也さんはそんな人じゃなかった。

「ちょ、ちょっとまって……。やっぱりそれ、別人じゃない?」
「でも氷室鷹也でしょ」

 ピシャリとそう言って、遥はスマホを取り出し、ある写真を開いた。
 それは遥の大学時代の研究室メンバーの写真だった。
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