一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

「へ? なんで……っ⁉」

 思わず転げそうになる。
 慌てて立ち上がった鷹也さんが私を支えた。

「キミの、沙穂の、見合い相手が俺」

 意味が、意味が分からない……。

 でも、鷹也さんが座っていた席の隣には、鷹也さんのお父さんで、実質、日本の製薬会社界トップのヒムログループ社長・氷室勝也さんまで座っているのだ。

 完全にこれはお見合いの席だ。
 業界最大手のヒムロと、中小規模の藤製薬の……。


 驚きで大きな声を出しそうになったけど何とか堪えた。
 たぶん、私が騒ぐと、藤製薬の印象もわるくなる。

 それからの流れは何も覚えていない。
 気が付くと、父たちは、あとは二人で、と部屋を出て行ったところだった。

 私が驚きすぎて、でも目の前に鷹也さんがお見合い相手としていることが信じられなくて……。
 顔を上げることもできなくて下を向いたまま、目の前に座っているはずの鷹也さんの気配だけを感じとっていた。
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