一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない

 戸惑って言葉に詰まる私を見て、鷹也さんは背中を優しく叩く。

「沙穂、ご挨拶して」
「は、初めまして……。ヒムロ・ヨーロッパホールディングス、ひ、氷室鷹也の妻の沙穂です」

 私が言うと、貴子さんは微笑む。

「あら、まだ奥様でいらっしゃったの? 離婚届を置いて出て行かれたと聞きました。いくら喧嘩したからと言ってそんな短絡的な行動をとられる方が奥様で大丈夫なんですか?」

(短絡的な行動……)

 それは確かにそうだ。言い訳することもできない。
 私は自分の手を握り締める。

「それは……」
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