一途な御曹司は溺愛本能のままに、お見合い妻を甘く攻めて逃がさない
16章:現在まで(鷹也side)

 沙穂が日本に戻ってから、俺はすぐに祖父に連絡を取った。

 祖父は、父に比べると自分に甘い。そして、父には強く出られる。
 つまり、祖父がOKを出せば、間違いなく沙穂との縁談は取り付けられると思った。

 この日のことを予感してか、先に母の死に目に立ち会えた時のエピソードを相手の名前を明かさずに父にも祖父にも話してあったので、それが藤製薬の藤沙穂であったということを伝えた。

 その上で自分の思いだけでなく、藤製薬の持つ特許と研究分野がうちに欲しい分野であることや、同じ研究室にいた藤遥の研究者としての腕についても説明し、祖父を取り込む。

 こっそりソフラル製薬の前会長にも連絡を取っておいた。祖父の気持ちをさらに後押ししたのも彼だ。それは沙穂の全く予期していない善意の行動のおかげでもあった。

 同時に、藤製薬の社長である沙穂の父にも連絡を取った。みのり製薬にも藤製薬より好条件な相手を紹介した。

 もともと政略結婚をするために、お互いにビジネスライクな関係を維持していたフェミル製薬の福本貴子の男性関係が緩いのも幸いした。これは最後の切り札に置いておいて、フェミル製薬が結婚と引き換えに望んでいた大規模の共同開発事業をフェミル主導で進める条件で婚約破棄を申し出たら、案外あっさり受け入れてくれた。あちらとしてはうちとの共同開発事業にプラスで他の会社とも手が組めるチャンスとでも思ったのだろう。

 まさか後で惜しくなってあんな行動をとるとは……まぁ、少しは想定していたが……。
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