second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
【Okuno side 10 : あたしに忍び寄る悪魔】
【Okuno side 10 : あたしに忍び寄る悪魔】
まだ夜が明けていない1月2日。
タクシーを拾って自宅まで帰り、シャワーを浴びてベッドで横になるも、涙が溢れ続け眠れない。
『日詠クンと伶菜ちゃんの結婚式の動画を観た時には泣きながらも寝ていたのに・・・』
自分の指で涙を拭ってもそれは止まらない。
恭があたしにしてくれていたように上手に涙を拭えない。
そのせいで
“でも、変わらないほうがもっと怖い。俺も、あなたも・・”
橘クンに言われた言葉を想い出し、私はとうとう嗚咽を漏らし始めた。
『あたし、変われなかった・・・本気でスキになってしまった相手の幸せを最優先に考えてしまった・・・』
『日詠クンの時だって、伶菜ちゃんには敵わないと思った・・・恭・・・橘クンにだってそういう人がいるはず・・・って・・・』
『恭に言いたかった・・・スキって・・・それなのに、自分から逃げた・・・』
誰もいないたったひとりきりの部屋で聞こえるのは、自分の後悔の声。
その部屋で一睡もしないまま朝を迎えた。
昨日のあたしは伊勢うどんやらぜんざいやら凄い食欲だったのに、今朝はお腹が空いていないというより何も食べたくない。
だから朝食抜きで晴れ上がった瞼を小さな保冷剤で冷やしてからメイクをして出勤する。
クルマは病院の職員駐車場に置いたままだったから、路線バスで移動する。
今日は1月2日。
正月三が日真っ最中であることもあってか、早朝のバスの空席も目立つ。
病院前のバス停で降りて、そのまま職員通用口から病院内へ入り、更衣室へ向かった。
「奥野先生、あけましておめでとうございます!今年も宜しくお願いします。」
『あけましておめでとう。今年も宜しくね。』
更衣室内で私服からスクラブ(手術着)に着替えている最中に声をかけてきてくれたのは、同じ産婦人科医師の後輩である小栗さん。
業務はしっかりやってくれる彼女だけど、プライベートも充実させたい傾向がある彼女。
「クリスマスイヴの当直、勤務受けて下さってありがとうございました。おかげ様で彼とディナーに出かけたり一緒に過ごすことができました!!!!」
『それは良かったわね。』
「あれ?奥野先生、今年はやさぐれないんですか?あたしのクリスマスイヴのディナーはカップ麺って・・・そういえば、ここ、赤いですよ?」
彼女の指があたしの首筋に触れてくる。
ロッカーの鏡でその部分を確認しようとした時、
「奥野先生、それ、キスマークじゃないですか?!!!!!」
一応、更衣室という場所に配慮してくれたのか、彼女は興奮混じりの囁き声であたしに問いかけてきた。