second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



『・・・えっと・・・・』


そのキスマークに身に覚えがあるあたし。
けれども、過去のあたしはこんなところにキスを残す男とは付き合っていなかったから、Vネックのスクラブ(手術着)を着た時、キスマークが丸見えになることまで気にかけられていなかった。


「も~う・・奥野先生もお盛んじゃないですか!!!! そういえば昨日、お休みでしたもんね!」

『・・・・・・うん、そう。あっ、違う・・・』

「あれ?奥野先生、なんか元気ない?」

『・・・そんなことないよ!元気だよ!あ~、あたし、今朝、早めに診ておかなきゃいけない患者さんがいるから先に行くね。』


彼女が口にした“昨日、お休みでしたもんね!”で、昨日の自分を想い出してしまい俯いてしまったあたし。
彼女に余計な心配をかけないように元気さを装い、そう言ってから逃げるように更衣室を出た。


その後、すぐにトイレに向かう。
洋式便座に腰かけてすぐに、鞄からメイクポーチを取り出し、手鏡とコンシーラーを手にする。


『ここか~。これは目立つ。こんなところにするなんて・・・・』


持っていた手鏡に映ったのは、首筋にある桜色のキスマーク。
昨晩、恭になった橘クンがおまじないをかけながら唇を寄せた場所とほぼ同じ。

『一夜だけの相手に、こういうの残しちゃダメでしょ・・・・』

あたしは全身の倦怠感を逃がそうと、大きな溜息をつきながら、そのキスマークをコンシーラーで隠しながら強がった。


一夜だけの相手にはしないこと
それを橘クンはあたしにした
昨日の夜のそれは本当は嬉しかった

でもダメ出しして強がらないと
あたしは喪失感に襲われてきっと医師としてここには立っていられなかった。
ここは、橘クンにいつ会うかわからない勤務している病院という場所だから。


橘クンに合わせる顔がないと思っているあたしは
この日もその翌日も、運よくなのか院内で橘クンに遭遇することはなかった。

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