second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
あたしから離れていた彼の手。
今度はあたしの頬ではなく、あたしの体を強く抱きしめた。
そして彼はあたしの耳に口を寄せて、“雅”と呼ぶ。
『ん?』
「雅・・・よっつめのおまじない、かけてあげる。」
『なに?』
「・・・雅は・・・橘雅になって橘恭矢に公私に渡って、一生愛し抜かれる。」
『・・・橘・・・雅・・・』
初めて、自分の奥野雅という名前を別の苗字に置き換えた。
なんか新鮮で、なんか恥ずかしくて
でもすごく感動してそれ以上言葉が出ないあたし。
「ごめん。今時、女性が男性の姓を名乗らなきゃいけない時代ではなくなってきているのに・・・」
優しくて気を遣い過ぎる橘クンらしい誤解。
その誤解を今度はあたしが優しく解いてあげよう。
大好きな彼に。
『恭に、おなじない、かけてあげる。』
「雅・・が?」
『うん。』
「どんなおまじない?」
『奥野雅は・・・橘雅になって、橘恭矢と公私に渡って一生、添い遂げることを誓います。』
「・・・雅・・・それ、おまじないじゃなくて、プロポーズに聞こえるんだけど・・・」
恭が見せた今日初めての顔。
それは、目を大きく見開いて信じられないという顔。
どんな時でもクールなはずの橘クンがこうやって色々な表情を見せる。
そのせいであたしをどんどん、はじまりは2番目だけど、今はあたしにとって1番の恋であり最後の恋という沼に溺れていくばかり。
でも、いつかはあたしが彼を溺れさせてあげたい。
『大好き・・恭。』
「あ~もう、それダメ。雅のこと、抱きたくなる。まだ俺、大仕事、残ってるのに。」
『大仕事?』
「そう・・・もう、俺がダメになる前に、左手出して、雅。」
もう少しで彼もあたしと同じように溺れてくれるかな・・・
そんなことを考えていた自分にかけられた彼からの突然の左手出せ要求に、あたしは素直に応じて、左手を彼に差し出した。