second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『・・・・・・・』
眠ったふりをするはずだったのに橘クンの安全運転で心地よく揺れる車体に誘導されていつの間にか眠ってしまっていたらしいあたし。
『えっ、あたし、寝てた?』
クルマがバックして停車した感覚がして慌てて目を開けた。
勢いよくアイマスクを取って睡眠ですっかり軽くなったカラダをひょいと起こして周囲を見回す。
どこかの駐車場。
破魔矢やお札を持って歩いている家族連れの姿あり。
隣には相変わらずな爽やかな笑顔の橘クンあり。
『着いたんだ、熱田神宮。ごめん、あたし、本当に寝てた。』
「本当に眠ったなら良かったです。あっ、言い忘れていましたが、ここは熱田神宮ではないです。」
『えっ、だって、さっき参拝帰りらしき人達、いた・・・・それに神宮に行くって・・・』
「いましたね・・確かに・・・神宮とも言いました。でも熱田さんとは言ってないです。」
『えっ、どこ?』
「行けばわかりますよ。行きましょう。」
やっぱり今も強引
なかなか行動に移せないあたしとは正反対
だからちょうどいいかもしれない
嫌悪感を感じる強引さなんかじゃなくて
任せてもいいかなんて思える強引さだから
『わかった、行こう。』
しっかりと睡眠を取ってどうやら元気なあたしは彼に促されるがままクルマを降りた。
『どこだろう、ここ。』
降り立った場所は確かに熱田神宮付近の景色じゃなくて、なんだか空気もおいしくて民家もある。
こっちですよと手招きする彼について歩いていくと、おかげ横丁という看板をあちらこちらで見かける。
『おかげ横丁・・・って、もしかして伊勢神宮?』
「さすが奥野さん。」
『え~っ?!お正月の伊勢って、渋滞とか凄くて、とんでもなく遠い場所なんじゃ・・・』
「まあ、渋滞もしていましたけど、それも初詣の醍醐味ということで・・・」
名古屋から伊勢って
愛知県と三重県って隣県同士だけど
とんでもなく距離がある!!!
しかもお正月、伊勢へ向かう道路はとんでもなく混雑して、
あたしの中では、お正月だけは行く前に諦めてしまう場所だった
「奥野さん、さっきも言いましたが、今日は仕事とか忘れて楽しみましょう。」
そう言いながら尻込みしかけているあたしの手を引いた橘クンが颯爽と進んで行った先は
「いらっしゃいませ、おふたりですか?」
「ええ。男性用もありますか?」
「もちろん!おふたりにお似合いのものもありますよ!」
伊勢神宮のお膝元にあるおかげ横丁近くのレンタル着物店だった。