second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
一緒に鳥居をくぐった後は景色をみながらおしゃべりをするあたしたち。
木漏れ日が差し込む神宮内の森をゆっくりと進む。
途中で敷地内に流れている川辺に降りていく人を見て、“川へ行くんだ・・寒いのに・・・”と呟いたあたしに、手を清めるために行く人もいることを教えてくれて、自分達も行きますか?と軽く首を傾げた彼。
せっかく参拝に来たのだから、自分もやってみたいと思ったあたしは迷わず頷くと、彼も小さく笑って頷いてくれた。
そして、石段になっている川の土手をゆっくりと一緒に降りようとするも、慣れない着物、草履姿に石のでこぼこが加わって足元がおぼつかない・・・とあたしは少し足が竦んだ。
「足元、不安定ですから気を付けましょう。」
と彼は耳元で囁いてから、再びあたしの手を握ってくれる。
さっきは、一緒に行こうと握ってくれた彼の手に照れ臭さを感じたあたしが、今はあたしを守ってくれようとしている彼の手に頼もしさを感じて。
あたしは彼の手を強く握り返した。
そして一緒に慎重に石段を降りてくれて転ぶことなく川辺に着いた。
あたし達は裾を軽く払いながらゆっくりとしゃがみ、川の水をすうっと掬い、手を清めた。
『あたし、今日1日で人間としておりこうになっているような気がする。』
「俺も新年から身が引き締まる想いです。」
『当直明けなのに?』
「ええ。久しぶりにいいお正月です。」
『あたしも。』
「・・・それは良かった。」
参拝ルートに戻るために降りてきた石段を再び昇る必要があるあたし達。
また足元のおぼつかさなが心配とお互いが予想したようで、ほぼ同時に手を繋ごうとしたことにやっぱり一瞬照れたけれど、そのまま手を繋いでそこを一緒に昇った。
その後も参拝ルートにある社でお参りをする・・・を繰り返しながら、彼と他愛のない話をして前に進む。
敷地内の美しい様々な景色を見ながら、足元の砂利と草履がこすれる時に生じるじゃりじゃりという音までも楽しんだ。
『砂利の音にまで癒される!』
「日常ではなかなか聞かない音ですからでしょうか・・・」
『外宮も行きたいけど、お腹空いてきちゃった・・・』
「そういえば昼、食べてなかったですね・・・着付してすぐに内宮へ来たので。おかげ横丁へ戻りましょうか?」
『そうだね。』
内宮の鳥居を再びくぐっておかげ横丁へ戻ったあたし達。
時は既に14時を過ぎていた。