second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
『あっ、ここ、イートインできるんだ。しかも、ぜんざいあるっ!食べたいな~。』
あたしがつい立ち止まってそう声をあげたのは、名古屋駅でも買うことのできるお土産の餅菓子を販売しているお店の本店前。
名古屋駅で買い物する時にはその支店で必ず少量パックを買って帰るというあたしにとってはお馴染みのあるお菓子。
その支店はテイクアウトのみの取り扱いであるため、あたしはその店の特製ぜんざいを食べたことがない。
『あっ、でも、橘クン、お昼食べてないから、甘いモノより食事のほうがいいよね?』
「いいえ。甘いモノでも大丈夫です。」
『あ~でも、伊勢うどんも捨てがたい。』
「両方食べるってのもアリかと。」
『それ、いいね!』
二兎を追うことにしたあたし達はまずは餅菓子店のイートイン待ち行列に並ぶことにした。
その後ろから聞こえてきた声。
《ねえねえ、そこにいる着物姿の男の人、モデルさんかな?すごいカッコいい》
〔きっとそうだよ。だって隣にいる女性も美人だし、雑誌の撮影とかあるのかな?それにしてもお似合いだよね〕
《声、かけてみる?》
〔写真、撮ってもらう?〕
大学生ぐらいであろう若い女性達の声。
雑誌の撮影あるのかな・・とあたしも周囲を見回しても着物姿の男女連れはあたし達以外にはいない。
ここじゃなくて離れたところかもと、身を乗り出して遠方を見ようとした時だった。
「あの~、モデルさんですよね?一緒に写真とか撮ってもらえます?」
「えっ?」
さっき後ろから聞こえてきた声と同じ声の女性がスマホを手にしたまま橘クンに声をかけていた。
病院内で女性スタッフに声をかけられている時は涼し気な顔で応対しているのに、今の彼は眉を下げて困惑した顔をしている。
どうするのかな?と興味半分に眺めていると、彼はようやく小さく口を開いて
「すみません。俺、モデルでもなんでもなくて、ただの会社員なんで。」
と目の前の女性達に応対した。
「会社員なんですか?もったいない!!!モデルじゃないのが!!!」
「そうそう。今からでもモデル、全然イケますよ!」
それなのに、逆に橘クンは彼女達に説得される始末。
お姉さん達
その人、モデルでもなければ会社員でもないんですよ
うちの職場は会社ではなく、病院ですから
正しくは病院職員ってことになるのかな?
確かに今日の橘クンは
雑誌の表紙になっていてもおかしくはない容姿
橘クン、今度こそどうするんだろう?ってこっそり笑っていたら、行列待ちしていたお店の男性店員さんに空席を案内された。
橘クンは男性店員さんの声に助けられたと言っているような安堵した表情で彼女達に会釈し、あたしの手を引いて案内された席へ移動してしまった。