second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結



「・・・ううん・・・なんか嬉しいの・・・」

「あたしも・・・橘クンのこと、名前で呼んでいい?」


一緒に着物を着てくれる彼女・・・後向きな俺が前向きになる
苗字ではなく名前で呼びたいと求めてくれる彼女・・・マイナス思考になりかけた俺をプラス思考にしてくれる

彼女といると
俺は180度変わるんだ
しかもbetterなほうへ・・・


もし、彼女が俺を求めるのであれば

『・・・恭矢(きょうや)です。俺の下の名前。』

「・・・きょう・・や・・クン?」

『ええ。恭矢の恭はうやうやしいとも読む恭で、矢は弓矢の矢で、恭矢です。』

できるのならば俺も変えてあげたい
俺が彼女をbetter、いや、bestなほうへ

この時の俺はそう想わずにはいられなかった。


でも、こうやって自分の名前を丁寧に説明すると、なんだか照れくさい
友人達からは“橘”と呼ばれていたし、調子に乗っている時の森村には“たちばにゃにゃ”とふざけた呼び方をされる

過去に付き合った女性には恭矢と呼ばれていたこともあったが、今、目の前にいる彼女からつぶやくように発せられた“きょう・・や・・クン”ほど破壊力を感じたことはなかった

今日、俺、本当にデレ過ぎて壊れるかもしれない
そう思った時、

「あたしと一緒だ・・・」

手を繋いだままの彼女がまた呟いた。
予想外のその言葉に壊れそうな俺が一歩踏み止まる。

『えっ?奥野さん・・・いや、雅さんと?』

「うん。漢字の意味・・・・礼儀正しいって意味が。」

『・・・・・』


雅と恭
礼儀正しいという意味も持つ漢字
共通点があることにも感動する


今日ほど、この名前に感謝したことはないかもしれない
自分の名前の漢字に込められた意味に背中を押されるなんてことも

『恭には、大切にするっていう意味もあります。だから・・・・』

「・・・だから・・・?」

大切にしたい
今、手を繋いでいるこの人を・・・
だから、俺は“押しすぎる”ぐらい押したいんだ

でもまた押しすぎたって反省するかもしれないけれど
それでもいい
押しすぎたら、この人はきっと俺にちゃんと教えてくれるだろうから
マイナス思考をプラス思考に変えてくれるだろうから

『一緒に・・一緒に行きましょう。雅さん。』

「・・・う、うん。わかった。」

そう思えた俺は驚いている様子の彼女の手を強く握って、その手を“引いて”、前へ進んだ


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