second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
彼女と手を繋いだままの伊勢神宮内宮までの道中では思っていたよりも緊張することなく穏やかに会話して進む。
彼女のほうも貸衣装店から歩き始めた時のような驚いた様子は徐々に薄らぎ、いつものような応対をしてくれている。
そうやって到着した伊勢神宮内宮の入り口。
いい年した大人が手を繋いだまま目の前にある橋を渡るのはどうか?・・でも手を離すのは名残惜しい
そう想い始めたところでお互いの手を握る力がほぼ同時に緩んで自然に離れた。
その流れで、俺は内宮へ繋がる橋の手前にある鳥居の前でいつものように一礼をする。
前に進もうとした時、隣にいる奥野さんがまだ深く一礼している。
彼女のその一礼も背筋がピンと伸びていて美しく、見惚れてしまう。
一礼を終えた彼女と目が合った時、同時に会釈をした俺達はようやく鳥居をくぐる。
日頃は昼夜問わず蛍光灯やLEDライトの明かりの中、空調の効いた病院内で目まぐるしく動く彼女と俺。
そんな俺達が今、自然光と微風を浴びながら神宮敷地内を着物姿で歩くことは日常から離れられる貴重な時間。
そんな時間に、今は彼女と手を繋いでいないものの、何気ない会話をしているせいかお互いにほぼ同じテンポで歩けていることも俺にとっては貴重
それだけではなく、
手を清めるために川辺へ行った時に彼女と交わした、いいお正月になったという会話も
そして
川辺から参拝路に戻る際にお互いに自然に手を取り合ってそこを昇ったこと
それらも俺にとっては貴重な出来事だ
昨日、病院の屋上で彼女を初詣に誘ったのは日詠さんの結婚式の動画を改めて彼女に見て欲しくなかったからだっただけなのに、
自分がこんなにも満たされる時間を過ごせるなんて思ってもみなかった
そういう時間を俺にもたらしてくれた彼女に
そして俺達を見守ってくれたであろう天照大御神に
それぞれに感謝をしながら再び鳥居をくぐって内宮敷地外へ戻った。
その後、満たすことを忘れていた腹をなんとかするために、再びおかげ横丁に戻る。
そこでやや遅めな昼食をとるために店を探す俺の隣で、明治時代風の建築物の前で立ち止まってそこをじっと見上げる彼女。
そこはフランス料理のお店。
そこで食べるのかと思っていたら、再び歩き出す。
どうやら彼女の食べたい店はここではなく、その店の建物に興味を持ったらしい。
その後も、彼女は通りかかった和風小物の店の前で立ち止まり、店の入り口にある、目を細めてにっこりと笑っている招き猫をじっと見ながら“かわいい・・”とつぶやく。
おかげ横丁には彼女の興味をくすぐるものが多いらしく、腹が減っていることを忘れてるなとこっそり笑っていると、
「あっ、ここ、イートインできるんだ。しかも、ぜんざいあるっ!食べたいな~。」
彼女は珍しく無邪気にそう声を上げ、和菓子屋の前で立ち止まった。