second love secret room クールな同僚医師の彼に溺れる女神:奥野医師&橘医師特別編完結
「あっ、でも、橘クン、お昼食べてないから、甘いモノより食事のほうがいいよね?」
声だけでなく顔をくしゃっとさせて、表情でも俺に食べたいを訴えてくる彼女。
『いいえ。甘いモノでも大丈夫です。』
「あ~でも、伊勢うどんも捨てがたい。」
それだけには止まらず、伊勢うどんも、と眉を下げて迷う彼女。
ホントに誰だ、これ?
恋愛百戦錬磨な姉に、“あんたはギャップ萌えで落ちるタイプ”と言い続けられて、そんなことは絶対にないと否定し続けてきた俺なのに
知れば知るほど心がくすぐられて俺は壊れるどころか、このまま死ぬかもしれない
『両方食べるってのもアリかと。』
「それ、いいね!」
彼女の前でそんな醜態をみせるわけにはいかない俺は、ぜんざいと伊勢うどんで迷う彼女に両方食べるという荒業返答をしながら冷静そうに見せることでこの場もなんとか持ちこたえた。
まずはぜんざいを食べることにした俺達は注文待ち行列の最後部に並ぶ。
ぜんざいにしようかと思っているのに、抹茶付こしあん餅もいいかもとまた迷い始めた彼女。
その後方から女性たちのはしゃぐ声が聞こえてくる。
周囲の客と同様にその声につい顔をしかめ、早く静かになってくれないかな・・とまで思っている俺なのに、その声の主の人達にモデルと勘違いされて一緒に写真を撮って声をかけられた。
奥野さんのかわいく迷う姿を見守っていることに集中したいのに
芸能人でもないのに写真を一緒に撮るとか勘弁して欲しい
しかも、モデルってさすがに褒めすぎだろ
会社員って嘘をついてまで断っているのにしつこく絡んでこられると
一緒にいる奥野さんにまで嫌な想いをさせそうだ
どうしようか・・と思っていると、和菓子屋の店員さんに席を案内され、その難局を乗り切った。
せっかくのぜんざいが今の騒ぎに不味くなるかもしれない
奥野さんにも申し訳ない
そう思いながら案内された席に着席すると
「彼女達、見る目あるな~。」
『奥野さんまでそんなこと・・・』
「橘クンが困った顔とかレアだな~。何食べる?」
『・・奥野さん?!』
「ふふ・・ごめん!で、何、食べるの?」
彼女は面白いものを見た!みたいな表情で俺にメニュー表を渡してきた。
嫉妬ぐらいしてくれよという想いを込めて彼女を軽く睨んでみるもその効果は皆無だったようで、それを諦めて温かくて美味いぜんざいを一緒に食べて笑った。