恋と旧懐~兎な彼と私~
ずっと1人であそこにいたのだろうか。

寂しすぎるでしょ。


『えと,○○から来ました。よろしく』



そんなことを思っていると,女の子の控えめな,興奮した声が聞こえた。

あれ,あの人……

っなわけないか。

見たことある気がするなんて,新手のナンパじゃあるまいし。



「なぁ,あいつじゃね? 唯兎の後ろ」

「やっぱりそう思う?」



私に声をかけるのは隣に座っている健くんだ。

さっきまで爆睡していたが,空気が変わったのを察して目を覚ました現金な男。



「な,どーおもう? 唯兎」

「別に,どうも思わないけど」

「ははっやっぱり」



暁くんがイラッとした表情をすると,健くんはしゃべるのを止めた。



「なー,名前なんて言うんだろーな~」



代わりに私に声をかけてくる。

健くんは転校生がよほど気になるようだった。
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