恋と旧懐~兎な彼と私~
「ふぅ」

「ごめんね」

「んーん」



慧の言葉が本当か強がりかは私には分からない。

でも……



「なら,まぁ良かったんじゃない?」

「なんで?」

「初恋,取っとけるでしょ? いつか慧にもきっと合う人がいるよ。こんなにも素直で優しんだから」



だからその時



「初恋はその人にあげたらいいよ」



私は柔らかく慧の頭を撫でる。

最近はちょっと癖みたいなものだった。

大人しく撫でられる慧に笑いかけると,慧は俯く。

また……?



「慧!? 熱あるの? 顔あか……」

「~っ大丈夫! 話聞いてくれてありがと愛深! じゃあねっ」



覗き込んだ私と,パタパタと離れていく音。

え……?

体調悪い訳じゃ…ない? のかな。
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