恋と旧懐~兎な彼と私~
「愛深~!」



やがて,2人は帰ってきて,慧は私の所へ走って来る。

ーぎゅっ


そして,いつかの日々のように,勢いそのまま抱きついてきた。



「ごめん。最後だから……」



久しぶりで戸惑う私も,そんな風に弱く頼まれては,受け入れるしかない。



「屈んで?」



そんなお願いも,きちんと聞く。

ーちゅっ



「えっ」



おでこ……だけど。



「へへっ昔いっぱいしてくれたお返し。結局初恋は失恋になっちゃったけど,大好きだよ,愛深。恋人はもう諦めるから,ずっと友達でいてね」

「……うん! 私も大好きだよ。もう慧は一生親友だから! リレーも,1位おめでとう。すっごくかっこよかったよ!」

「うん。ありがとう」



慧が愛深のお陰なんて笑って,隣にいた暁くんが私の腕を掴んだ。



「愛深,もう返してもらうから」

「うん,いいよ」



慧は,どこかスッキリした表情で暁くんに返事をする。

私が連れていかれたのは,いつかと同じ校舎裏。
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