鬼弁護士は私を甘やかして離さない
車に乗り込むと滑らかに走り出した。
車に乗ってからしばらく無言が続いた。
赤信号で止まった時、ようやく恵介は私の顔を覗き込むように話しかけてきた。

「元彼、だよな?」

「うん……」

「俺、邪魔した?」

「ううん。そんなことない。斗真には恵介が迎えに来ることを話していたところ」

そう伝えると恵介は、はぁ、と大きく息を吐き出した。

「焦った。真衣が男といるところを見て本気で焦った。昨日の今日でこんなことになるなんて。もっと俺のことを知ってもらう前に元彼と会うなんて。真衣が俺の腕の中にいたはずなのにいなくなったらと思ったらガラにもなく焦って割り込んだ。でも真衣にとってそれは迷惑なことなんじゃ、と思うと居ても立っても居られないくらいにモヤモヤした」

一気に話す恵介にビックリした。
自信に満ち溢れている恵介にこんな一面があったなんて思わなかった。
仕事では常に自信を持って向き合っている姿を見ていた。食事に行っててもいつもゆとりを感じ、私を揶揄うようなことが多かった。
だから私を好きといわれても、心のどこかで不安に思う気持ちがあった。だから私も食事に行ってても惹かれるけど、一線を越えなかったのかもしれない。

でも恵介の胸の内を聞いて今まで以上に恵介に惹かれた。

「恵介、私は恵介が好きなの。恵介の人の気持ちに立った仕事ぶりも誠実さも知ってる。鬼のような姿も知ってる。私を守ってくれるって言ってくれた恵介を信頼してる。斗真のことを過去にしてくれた。前を向かせてくれたのは恵介だよ」

青信号に変わり、車を走り出させた恵介の横顔に向かって語りかけた。

「恵介は嘘をつかないし、私も恵介を信用できると思ってる。恵介のことを知れば知るほど惹かれてる」

恥ずかしくて徐々に声が小さくなった。
車が公園の駐車場の端に停められた。

私が不思議に思っているとシートベルトを外した恵介が身を乗り出してきた。
そして私を食べてしまいそうなほどのはげしいキスを始めた。
唇を甘噛みされ口を開かされる。
開いた口に、性急に恵介の舌が入り込んできた。
私の口の中をなぞられビクッとしてしまう。
舌を絡ませられ、私は声が漏れてしまう。

あぁ……ん

恵介に頭を両手で押さえられ逃げられない。
私も恵介のスーツにしがみつく。

どれだけキスしていたんだろう。
恵介が離れると唇がヒリヒリした。

「良かった。俺の腕の中にまだいてくれて」

そういうと私をぎゅっと抱きしめた。

「真衣はああ言ってくれたけど俺はいつでも自信があるわけじゃない。ハッタリをかますことだってある。だから真衣の事を不安に思うのは本心。でももう離せない」

「うん」

ふと気がついたけどここって公園の駐車場だ。

「恵介。ここって目立ってない?」

私が恵介のスーツに顔をつけたまま聞く。

「うーん。大丈夫、かな。木の影になってるし端っこだし。さっき1人通ったけど慌てて走って行った」

「え?!ヤダ。もーっ!」

「大丈夫。真衣の甘い顔は他のやつには見せられないから俺が隠した」

「バカバカ!」

まだ顔を上げられずにいると頭にチュッと音を鳴らしキスが落ちた。

恵介、甘すぎる。
知らなかった恵介の顔がどんどん見られて嬉しすぎる。
このまま抱きついていたい。
そう思ったけど恵介は体勢が辛いらしく、イタタと言っていた。

外の陽がだいぶ落ち、私たちは駐車場から移動した。

「真衣、ブーケもらったの?」

「うん。トスじゃなく直接もらったの。感動で泣いてばっかりだったよ」

式の話をすると恵介は頷きながら聞いてくれた。

公園を出ると恵介が予約してくれていたホテルのレストランへ向かった。
パーキングに入れたあと私は恵介に促されトイレへ駆け込んだ。
恵介のせいでメイクも髪型も乱れていたから……あぁ、恥ずかしい。
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